9万2656頭 ― この数字は、27年度に国内で殺処分された犬と猫の数です。
私たちが変わらぬ日常を送っている間に消えていった命。
大牟田市の現状を知り、私たちに何ができるのかを考えてみませんか。
殺処分とは
犬や猫の殺処分は、県や各自治体の保健所などが管理する専門の施設で行われます。大牟田市では、動物管理センターがその役割を担っています。施設に持ち込まれた犬や猫は、飼い主が迎えに来なかったり、引き取ってくれる人が見つからずに一定期間がたったりした場合、通常は殺処分されます。
「殺処分」の現場は大きく変わっています。
「ドリームボックス」という言葉を耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。ステンレス製の小さな部屋に犬たちを追い詰め、中に炭酸ガス(一酸化炭素など)を充満させて窒息死させるものです。中の犬たちは5分程で息絶えます。現在は、せめて犬たちの苦しみを少なくするため、多くの施設で麻酔薬を多めに投与する方法を採用しています。
犬や猫の殺処分数は、年々減少しています。
殺処分数の減少につながった社会的な要因として、平成25年の動物愛護法の改正があります。この改正により、飼い主には「終生飼養(しゅうせいしよう)(動物を最後まで責任を持って飼うこと)」が義務付けられました。これにより、施設への安易な持ち込みに対して、職員は引き取りを拒否できるようになりました。犬や猫を安易に引き取らない代わりに、今まで家族として暮らしてきた犬や猫を手放す理由を聞き、今まで通り飼える方法、または引き取り手を探す手段について助言を行うなど、より踏み込んだ内容で飼い主へ指導を行えるようになりました。
そのため、現在施設に持ち込まれる犬や猫は、そのほとんどが迷い犬や負傷した犬・猫、親猫が見当たらない子猫などです。施設で管理する頭数が減ったことにより、里親にもらわれやすくなります。
◎殺処分数、福岡県は全国で6番目に多い
1位は長崎県、2位は大阪府、3位は山口県…殺処分数が多い順番です。福岡県は全国で6番目に殺処分が多い都道府県です。殺処分される動物のうち約8割は猫です。猫にとって生きやすい、温暖な気候の港町や、繁華街で栄えている町であることが、猫が増えて殺処分数が多くなる要因のひとつといわれています。また、殺処分される猫の多くは、生後1カ月までの離乳前の子猫です。譲渡できる状態(離乳)まで世話をしてくれるミルクボランティアも求められています(ミルクボランティアに興味のある人はページ下を見てください)。

自分に何かあった時のために
愛犬、愛猫を託せる人を探しておきましょう
INTERVIEW 大牟田市動物管理センター

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敷地内にある慰霊碑の前で。写真の犬はこの撮影の翌日に、新しい飼い主へ引き取られていきました |
当センターには、1日に何件も、犬や猫の持ち込みの相談があります。「飼い主が入院して、世話をする人がいない」「犬の看病が大変」「飼い猫が子猫を生んだが、面倒を見きれない」「引っ越し先でペットが飼えないから」…など理由はさまざまですが、ほとんどが飼い主の都合です。確かに飼い主や家族にとっては大変な状況かもしれません。しかし、犬や猫たちを命の危険にさらすほどの理由でしょうか。命が懸かっているので、時には飼い主と衝突することもあります。話をする中で、どうすればこれから先も動物と一緒に暮らしていけるか、一緒に考えています。
処分される犬猫のうち、大半は子猫です。野良猫に無責任にエサを与える行為は、結果的に不幸な猫を増やすことになることを知ってください。また、野良猫が増えると、ふんなどの臭いで不快な思いをする人が出てきます。野良猫に餌をあげるのであれば、不妊・去勢手術を行い、餌の後片付け、ふんの処理まで行なってほしいと思います。
センターにやってきた犬や猫は、譲渡することができます。譲渡は犬や猫の命を救う手段ではありますが、犬や猫が再び不幸になるようでは意味がありません。「譲渡希望者調書」には、家族構成、アレルギー疾患の有無、転居の可能性、飼育経験、飼育費用をねん出できるかといったさまざまな項目があり、犬・猫が最後まで幸せに暮らせる環境かどうか、確認します。
当センターでは、年に1回、犬のしつけ等に関する講座を開催しています。27・28年度は「老犬との暮らし方講座」を開催しました。犬も猫も年を取り、がんや糖尿病、心臓病、認知症を発症したり、寝たきりになったりします。認知症になると、飼い主をかんだり、部屋のあちこちでふんやおしっこをしてしまいます。年老いた犬・猫のありのままを受け入れ、最期を迎えるその日まで大切に、責任を持って飼ってください。
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大牟田市動物管理センター
ここに連れてこられた犬や猫は、市のホームページなどで情報を公開しています。飼い主を待つため一定期間収容された後、里親を募集し、譲渡先が決まらなければ通常殺処分されます。
取材に訪れた日にいたのは犬が2匹。周りを木々に囲まれた静かな環境で、外の犬小屋につながれて、センターの職員にも慣れた様子でした。
建物内には、前述の「ドリームボックス」がありますが、この装置は現在使用されていません。同センターでは、26年度からは麻酔薬の投与による殺処分方法を採用しています。しかしこの麻酔薬も、28年度は使用されることはありませんでした。大牟田市は28年度、殺処分数0を達成したからです。

職員が「クロ」と呼んでいる犬。
人が大好きで、一度は譲渡されましたが、人をかんでしまい、センターに戻ってきました
INTERVIEW 山田 伊津子さん
子どもの時(約40年前)、家で生まれた子犬5匹を父が山に捨てに行くのに、私も付いて行きました。母犬は捨てるつもりはなかったのですが、結局子犬を追って行ってしまったことが、とても悲しく、同時に印象に残っています。動物にも感情や親心があるんですよね。
今、我が家には高齢の犬が3匹と1歳の猫が1匹います。元々は知人が面倒を見られなくなったり、近所をさまよっていたりした子です。ダックスフントのソラは、あるブリーダーの元で生まれました。生まれつき両前足が欠損していたので、殺処分も考えられていた犬ですが、家の中を走り回るくらい元気に成長しました。我が家で引き取るまで生きていてくれて本当に良かったです。今は目も見えず、足腰も弱ってきました。これから世話が大変になるかもしれませんが、家族の一員として大切に思う気持ちは、最期まで変わりません。
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アニマルライフセーバー
28年度に殺処分0を達成した大牟田市も、10年ほど前は殺処分される犬や猫は年間500匹以上。迷い犬や負傷動物の保護、飼い主からの持ち込みが止まない中で、飼い主が現れず、譲渡先も見つからない犬や猫を、いつまでもセンターで収容しておけないのが現実でした。
そんな犬や猫を少しでも減らしたい―そんな思いをもった市民により、平成19年3月に結成されたのが動物愛護団体「アニマルライフセーバー」です。
当時は飼い主の「終生飼養」義務が定められておらず、センターには飼い主から持ち込まれた動物も含めて、たくさんの犬や猫が収容されていました。それら全ての犬や猫の譲渡先を探すのは不可能です。毎日のようにセンターに行っては、里親が見つかりそうな動物の情報を持ち帰り、ブログで里親を募集しました。「殺処分0」とは程遠い状況で、できる限りのことを一生懸命やっていました。
現在、アニマルライフセーバーのメンバーは20人弱。引き取り手がなく、会のシェルターで暮らす犬や猫は、今でも常時100匹を超えています。代表の石村さんをはじめ、メンバーはその生活の多くを、活動に注いでいます。
本来殺処分になってもおかしくなかった犬や猫の命が、アニマルライフセーバーの皆さんの身を削った活動によって、守られているのです。
私たちにできること
国内では、まだたくさんの犬や猫が悲惨な最期を迎えています。そして、ここ大牟田市でも、悲劇がいつ再び起こるとも限りません。
殺処分の問題は、一人ひとりの心掛けがあれば、確実に解決に近づきます。少しでも興味を持った人は、その思いを無駄にしないでください。小さな行動のひとつひとつこそが、今、求められているのです。
動物を飼う時は
・犬は動物管理センターで登録し、狂犬病予防の注射を受けさせてください
・飼い犬・猫に繁殖させるつもりがない人は、不妊・去勢手術を受けさせてください。生殖器系の病気予防にもなります。
・首輪に、迷子札(犬は登録鑑札・注射済票)を付けてください(迷子札は飼い主の名前、電話番号を記載した物。動物病院でのマイクロチップ装着も推奨しています)
・猫は室内飼育をしてください(猫は高さを工夫した空間があれば、特に広い生活空間を必要としません)
・動物を飼うお金の余裕があるか、転居などで飼えない状況にならないか、動物が年老いても最期まで大切に飼うことができるか…よく考えてください
飼い犬・猫がいなくなったら
すぐに大牟田警察署(電話43-0110)と大牟田市動物管理センター(電話52-7493)に連絡をしてください。
※飼い犬・猫が市外で保護された場合は、保護された場所を管轄する施設へ収容されます。遠くへ行く可能性も十分考えられるので、有明保健所(玉名市 電話0968-72-2184)、南筑後保健福祉環境事務所(柳川市 電話0944-72-2163)等へも連絡することを勧めます。
地域の一員として
・野良猫に無分別なエサやりをしないでください
・野良猫のふんやおしっこの解決方法として、地域で野良猫の不妊・去勢を行うことが最も有効な方法です
・親猫が見当たらない子猫がいる場合は、見つけた人が保育したり、保育できる人を探して保護してください。
動物管理センターやアニマルライフセーバーだけでは、その全てに対応することは困難です
不幸な犬や猫を増やさないために皆さんの応援が必要です
アニマルライフセーバーへ支援をお願いします
犬や猫の飼育に掛かる費用や必要な物は、全てメンバーの私財と募金によって賄われています。飼育頭数は現在100匹を超えていて、すでに新たな犬や猫を迎え入れることも難しい状態です。
一緒に活動してくれる人、さまざまな支援をしてもらえる人、少しでも興味を持った人は、アニマルライフセーバーのブログ(http://ameblo.jp/omuta-animal/)を見てください。
犬・猫を救うボランティアを募集しています
動物管理センターまたはアニマルライフセーバーへ、まずは連絡してください。
●子猫のミルクボランティア
子猫が離乳する生後1カ月くらいまで、1日5〜6回のミルクを与えることができる人
●引き取り手がない動物の最期のお世話をする人
手足等が不自由、高齢など、手が掛かり、引き取られていく可能性が低い犬・猫を自宅で最期まで飼育してくれる人
野良猫のふんやおしっこで困っている人へ
〜猫よけ対策など〜
●猫が嫌いな匂いがする物をまく
嫌いな匂い…かんきつ系、コーヒー、酢など
【例】みかんの皮を細かくちぎった物、コーヒーのかす、木酢原液や水で薄めた酢
●センサーで音や光が出る猫除けの製品を置く
●肉球に刺激を与えるものを敷く
【例】とげシート(ゴム製)、卵の殻を乾燥させて砕いたものなど)
●殺菌・消臭効果のある消石灰をまく
注意!「とらばさみ」は違法です
先日、大牟田市内で「とらばさみ」が使用されているのが見つかっています。これは、動物だけでなく人間にも危害が及ぶ恐れがある、大変危険な わな です。
学術研究などの特定の目的以外での使用は違法です。違法なとらばさみが仕掛けられているのを発見した時は、すぐに警察や動物管理センターに通報してください。
■問合せ
●大牟田市動物管理センター(電話52-7493)
【相談できること】
・犬や猫の譲渡
・動物愛護団体が開催する譲渡会の案内
・保護した犬や猫の対応についての助言
・犬のしつけ教室の案内
・動物取扱業の案内
・飼育相談
●アニマルライフセーバー(ブログhttp://ameblo.jp/omuta-animal/)
【相談できること】
・犬や猫の譲渡
・保護した犬や猫の対応についての助言
内容についての問合せは各担当課まで。このホームページ全般に関する問合せは、大牟田市秘書広報課広報担当へどうぞ。 hisho-kouhou01@city.omuta.lg.jp 電話:0944-41-2505(直通) 大牟田市HP TOPページへ |