火災の被害を拡大させないための適正な維持管理のすすめ 最終更新日:2021年4月5日 印刷 火災は対策によっては被害を最小限に留めることができる災害です。逆に対策を怠ったがために犠牲者を出すなど悲惨な結果となることも少なくありません。また、知識不足により違法な工事を行ってしまうと、最終的に取り壊すしかなくなる可能性もあります。建物の増改築や改修の際には、法令に精通した建築士等に相談することが重要となります。特に不特定多数の利用がある建物や大規模な建物の所有者及び管理者の方は、維持管理に対して重大な責任があることを忘れてはなりません。 維持管理についての注意点 所有者・管理者は建物をいつも法律に適した状態に維持しなければなりません。火災対策として重要な防火・避難施設の維持管理について以下のようにまとめましたので、ご活用ください。 なお、本文中の、法は建築基準法、令は建築基準法施行令のことです。 1.安全な避難経路を確保するための施設階段等の防火区画 注1(令第112条第11項) 建築物に吹き抜けや階段の部分がある場合、火炎や煙が上昇して火災拡大の原因になります。また、階段部分に煙が充満すると避難に著しい支障が生じます。主として3階建て以上の建築物について、階段等の部分に防火区画を設置することが義務付けられています。この階段部分等では火災時に防火扉等が作動するよう、維持・保全することが必要です。 竪穴区画(階段部分)の防火扉事例 注1:防火区画 防火区画とは、規模が大きな建築物や火災が起こりやすい部分を有する建築物、階数が高い建築物などを一定の部分に分割する燃えにくい壁や床、建具のことです。これにより火災の延焼を防ぎ、消火活動や避難を円滑に行うことができるのです。 直通階段 (令第120条) 災害時には2階以上にある部屋からは階段を利用して避難しなければなりません。不特定多数の利用がある建築物や3階建て以上の建築物は、直接1階へ避難できる直通階段の設置が義務付けられています。直通階段の途中に扉を設けることや荷物を置くことは、避難の妨げとなります。 屋外の直通階段事例 排煙設備 (令第126条の2) 火災時の煙は、避難に支障をきたすばかりでなく、同時に消火活動の妨げとなる要因でもあります。排煙設備や窓から煙を逃がしていくことが、火災の被害を軽減する上で重要です。排煙設備が火災時に有効に作動するかが重要となりますので、日常の点検が必要です。 排煙設備(手動開放装置)の事例 防煙区画 (令第126条の3) 大規模建築物における火災時の煙については、発生場所から拡散していくことを防がなければなりません。排煙設備が求められる建築物は、500平方メートル以内または排煙設備まで30メートル以内になるよう防煙区画によって区切られなければなりません。防煙区画を形成するための代表的なものとして、網入りガラスによる防煙たれ壁があげられます。改修等で、撤去したままにしないで下さい。 防煙区画の事例 非常用照明 (令第126条の4) 避難通路の誘導灯とは別に災害時に必要最低限の照明を確保することにより、避難する人のパニックを抑制することができます。特に災害時には電源も遮断されてしまうことがあり、予備電源を備えたものが重要となってきます。不特定多数の利用がある建築物や大規模な建築物の居室(常時作業を行う部屋や居住する部屋)や廊下には、この非常用照明の設置が義務付けられています。機器の劣化等により、点灯しないことがありますので、日常の点検が必要です。 非常用照明の事例 内装制限 (令第128条の5) 火災によって、建築物の天井や壁から避難に支障のある有害なガスや煙が発生することがあります。火災発生の危険性が高い部屋や不特定多数の利用がある建築物で一定規模以上のものや大規模な建築物の居室(常時作業を行う部屋や居住する部屋)や廊下には、内装制限が義務付けられています。リフォーム工事等で、可燃材を貼らないようにして下さい。 不燃材料等の表示事例 2.火災の延焼・拡大を防止するための施設 火災報知器 (消防法第9条の2、消防法第17条) 火災の発生を早期に発見するために、住宅の寝室等に関しては火災報知器の設置が義務付けられています。また、火災を封じ込めるよう防火区画と連動した火災報知器もあります。火災報知器が適切に作動するために、設置場所等の基準を満たすことが大切です。 火災報知機の事例 防火設備 (法第61条他) 防火・準防火地域内の建築物や準耐火建築物・耐火建築物については、火災が延焼することを防ぐために窓等に防火設備を設置することが必要です。また、大規模な建築物等で、火災が内部拡大することを防ぐために設置される防火設備もあります。防火設備で代表的なものは、網入りガラスをはめ込んだサッシや鋼製で自閉式の扉などがあります。自閉式の防火設備については、火災時に作動することが重要ですので普段から作動するように維持管理することが大切です。 防火設備の事例 3.救出経路を確保するための施設 非常用の進入口 (令第126条の6) 火災時の救助活動や消火活動を円滑に行うために3階建て以上の建築物には原則として非常用の進入口や代替進入口を設置する必要があります。非常用進入口が火災時に有効に活用されるよう、家具等で塞がないようにして下さい。 代替進入口の事例 増改築や改修についての注意点 完成した際には適法であっても、増改築や改修によって違法な建物となってしまうことが少なくありません。これらの工事は、新築に比べて規模が小さく、利用しながらの工事が多いため、設計期間や工期が短い傾向にあります。施主の要望による追加工事や意匠優先の判断などを短い期間に行ったために、法令を見落としてしまうようです。未然に違反行為を防ぐためには、時間の余裕をもって建築士などの専門家に相談することが大切です。増改築や改修工事の際には、以下の点に注意して計画を進めましょう。 既存建物は図面どおり竣工しているか?確認済証・検査済証の有無により既存部分の適法性を確認しましょう。 増改築・改修の工事計画を専門家がチェックしているか?建築士等の専門家に計画の適法性について、ご確認されることをお勧めします。計画の内容に疑問があれば、建築住宅課および消防本部予防課へご相談ください。 増改築・改修工事が確認申請が必要な内容か?増改築・改修工事または増改築のない用途の変更でも、工事の規模、内容等により確認申請が必要な場合がありますので、必ず事前に確認してください。また、工事の内容が確認申請を必要としない場合であっても、法律には適合する必要があります。 増改築・改修計画が既存建物の防火上重要な箇所を損なうことはないか?違法な増改築・改修により、既存部分の防火上主要な箇所が有効に機能しない事例が見受けられます。既存部分の防火や避難についても留意してください。 違反となりやすい具体事例について 防火避難に関しては、次のような違反の事例があります。 延焼のおそれのある部分の外装、開口部等の防火性能の不足延焼しやすい部分の外壁を板張り等(燃えやすい素材)で仕上げる。換気扇を交換し、防火ダンパー注2が無いものとする(準防火地域内等)。網入りガラスを防火性能のない普通の透明ガラスに交換する(準防火地域内等)。 火気使用室や高層階の内装の不燃性能の不足ガスコンロのある台所で天井の仕上げを板張り等(燃えやすい素材)にする。床面積が100平方メートルを超える高層住宅で内壁を板張り等(燃えやすい素材)にする。 火災警報器の不適切な位置への取付けや復旧忘れ天井クロスの張替えで、火災警報器の復旧を忘れる。 避難ハッチの塞ぎや避難経路の幅員減少避難ハッチにスノコ床を敷きこんで、避難ができない状態とする。エアコンの室外機を置いて、ベランダの避難経路を塞いでしまう。 注2:防火ダンパー 防火ダンパーとは、火災の延焼を防ぐために換気扇や空調機の風道に設置される器具のことです。一般的には、熱や煙を感知して金属板が風道を塞ぐ仕組みとなっています。 相談・問合せについて 建築基準法について大牟田市都市整備部建築住宅課電話:0944-41-2797 消防法について大牟田市消防本部予防課電話:0944-53-3521